彼は誰時 - 最北暮らし -

かわたれどき。最北住み。50代主婦。

2歳児と駆け抜けた「君が夏を走らせる」(瀬尾まいこ)

「新潮文庫の100冊 2024」の「君が夏を走らせる」を読みました。

大田は不良少年で学校にも行ってない。中学校の時に駅伝に出走し、誰かと共に乗り越えていく時間を知ったものの、高校では不本意な学生生活を送っている。

そんな中、先輩の奥さんが緊急入院することとなり、大田は1歳10ヶ月の鈴香の子守りのバイトをすることになる。


小さな子のお世話をしたことがない大田は二人っきりで家に残され、泣き続ける鈴香を眺めることしかできません。何を話しているのか言葉が分からない時もあり、途方に暮れます。

鈴香の母親から渡されたノートを頼りにお世話を始め、少しずつ鈴香と気持ちを通い合わせられるようになります。

しだいに大田自身が、鈴香に必要だと思うこと、してあげたいことを考え出し、いろいろなアイデアで鈴香との時間を過ごすようになります。

本物のお米をぱらぱらと

おままごとをしている鈴香のかたわらで、ご飯を作り始める大田。鈴香のおもちゃのフライパンに、生米を入れてあげます。鈴香はぱらぱらと炒めはじめ、大喜び!

大好きなシーンです。

ちょっと大人な気分になれる、本物のアイテム。

子どもって、子どもの世界に全振りして遊んでくれる大人も好きだろうけど。一人の人間として向き合ってくれて、ちょっとだけ大人の世界に引き上げてくれるような人も好きだと思います。きっと。

大田は誠実で、鈴香を尊重する距離感が抜群です。

大田の高校生活は思っていたのと違うルートできてしまったみたいだけど、君、絶対に、素敵で魅力的な青年になるよ!!

大田との時間を過ごし、世界が広がり、成長した鈴香。言葉も増えていきます。

ひと夏の子守りでしたが、大田の心も満ちあふれてきます。また自分の人生の未来へと一歩を踏み出します。

温かなお話

最後まで温かなストーリー ★★★★★

2歳児のかわいさ ★★★★★

実際は子育てはそんなに簡単ではないらしい ★★★★☆

駅伝のお話「あと少し、もう少し」に登場していた大田が主人公ですが、そちらのほうを読んでいなくても、充分に楽しめるようです。